島の主、特別天然記念物イリオモテヤマネコと暮らす人々

国の特別天然記念物にも指定されているイリオモテヤマネコ。深く謎に満ちた西表の亜熱帯林に大昔から暮らす、島の生き物の頂点に君臨しているといっても過言ではない存在かもしれません。

その生態は多くが解明されておらず、生物学者の中では特に興味がそそられる対象となっています。

もちろんネコ科に属するわけですが、長い間野生として西表のジャングルで子孫を残してきた固体は、生命力に溢れ、なにか人間さえも寄せ付けない特別なエネルギーを感じます。

正式な資料によると、実際に固体が確認されたのが今から約50年前の1965年。西表島の固有亜種であり、ヤマネコ種が生息する面積としては世界最小である。

その為、何百年もの間どのように捕食し繁栄活動を行ってきたのか謎が多く、西表島のような小さな島に肉食獣自体が住んでいること自体奇跡だといわれています。

西表の自然林の中には、天敵といった天敵は存在せず、一匹一匹が縄張りのようなものを保有し互いに生活している。

そんなイリオモテヤマネコだが、唯一の天敵が人間ということになる。悲しいことではあるが結果としてそうなってしまっています。

もちろん、天敵がいないからといって無限に増えていくものではなく、縄張り争いや動物特有の病などで命を落とす機会あるだろう。

しかし、島の人口が増えるにつれ、ヤマネコにとっての生活圏が失われている事実は否めない。

現に、死亡例の多くは車に引かれているのが原因である。

もちろん、わざとでは無いにしろ、人間の生活が大きな影響を与えていることに変わりは無い。

本土からの移住者が増え、今まで山だったところを切り開き住宅にし、今まで道路が無かったところに道路を作り、どんどん人が住みやすい環境が作られていく。

逆に言うなら、今までそこを生活圏にしていた生き物たちが追いやられていくことになっているのです。

また移住者たちが持ち込んだ、飼い猫や飼い犬などに捕食されてしまったケースも、多くはないが報告されている。

近年ではそういった貴重な生き物たちを人の力で守っていこうという運動も活発かしてきました。

目指すは共存ですよね。どちらかが出て行けばよいというものではないのです。

島を愛するもの同士の敬意と尊重を示していかなくては未来はありません。

むしろ、後からこの島に住み着いたのは人間のほうなのだから。人間だけの便利さの追及や発展はエゴそのものです。

人間らしい知恵を出し、人々とイリオモテヤマネコに始まる生き物たちが、同時に住みよい環境を作っていこうと。

そのような活動が、世界から見ても魅力ある島作りになって行くことでしょう。

今の時代だからこそ、山、川、海と広い視野を持ち、人間にとって生きる資源である自然を大切にし、地球という同じステージで生きてゆくもの同士、同時に発展の道を歩んでいかなくてはならないのです。

日本の南の果ての西表島で、何百年と命をつなげてきた、イリオモテヤマネコという生き物から人間の未来への希望を学んでいるのです。