西表島に暮らす人々の生活のリズムは、現在使用されている新暦と明治時代初期まで使用されていた旧暦が入り混じったものであるといえるかもしれません。
もちろん、行政的なものや学校関係、職場などのメインの生活リズムは新暦に沿って営まれています。
しかし、昔から続く行事や伝統的なお祭りなどは当時のまま旧暦の日取りに合わせて行われるものも多くあります。
今回はそのうちのお盆行事について見ていきましょう。いわゆる旧盆ですね。
行われる日取りは、旧暦の7月13、14、15日の3日間です。
もともとお盆は、代々のご先祖様の霊を家に招き、感謝の気持ちを伝え五穀豊穣を祈願するための行いごとです。
13日は、”ウンケー”と呼ばれ、仏壇や位牌を綺麗に掃除して清め、新しい花をいけ、飾られたちょうちんにも明かりを灯し、ご先祖様の霊を迎え入れる準備をします。
仏壇の周りには、島の果実や野菜などの恵みを並べます。
またお供え物して、しょうがを使った料理を並べる風習もあるようです。しょうがの強めの匂いには、霊に宿る邪気を振り払う作用があると言い伝えられています。
ここが始まりで送りの15日まで、ご先祖様たちのお世話を行います。
中日の14日には、自分たちの本家や関わりのある分家に訪れお線香をあげます。この日に関しては特に決まった行いは無いが、お仏壇には一日三度食事を取替え、花やお水の交換もし、居心地のよい環境を維持しもてなします。
与えられる食事の内容はというと、一例になりますが、朝食はおかゆ、とうふのお味噌汁、ゴマを使った酢の物など。お昼には冷やしソーメンが一般的である。理由は不明。夕食は白米、汁物、大根や昆布などの煮物、酢の物などがならびます。
そして、送りの15日。西表島では”ウークイ”と呼ばれます。この時も絶やすことなく一日三度の食事を用意します。
朝食と昼食に関しては中日と同じような献立になります。おやつなどが加えられる程度です。
最後ウークイの夕食には、お餅と御三味を使った、ウークイ料理が供えられます。
送り日のウークイだけは遅めの時間から始まります。これはあまり早い時間に済ませるのは、ご先祖様の霊たちに対して失礼だとされているからの様です。
仏壇に線香をたき、ウチカビと呼ばれる紙銭を燃やします。この行為はあの世に戻られるご先祖様たちがお金に困らないようにするためです。
このウチカビを燃やしたり、全体の流れを取り仕切るのは必ず長男の役目だとされています。
そのほか、アンガマ行列と呼ばれる、あの世から来た霊を模倣した集団が集落全体を練り歩き、招かれた各家で、儀式を行います。
この行列は太鼓や三線などを使い、とても賑やかに演じお盆行事に華をそえます。
島での旧盆の行いは、先立たれたご先祖様たちをもてなし、残された子孫たちが共に明るく楽しく過ごす三日間なのであります。
子孫たちが楽しく現世を生きる姿を確認して、安心して再びあの世に帰っていくのです。